夜勤明けの本音 シーズン1
第1話
からあげクンが、美味しかった夜
夜勤明けのコンビニは、少しだけ別世界みたいだ。
出勤前の人たちが急いでコーヒーを買う横で、私は白衣のポケットに残ったメモを握ったまま、ホットスナックのケースを見つめていた。
帰ったら寝るだけなのに、なぜか何かを買わないと帰れない朝がある。今日を終わらせるための、ちいさな儀式みたいに。
からあげクンを買った。袋の中でまだ温かいそれを、駐輪場の端でひとつ食べた。
美味しかった。
その瞬間、なぜか涙が出た。患者さんの急変でも、先輩のきつい言葉でも泣かなかったのに、からあげクンが美味しくて泣いた。
限界の日ほど、体は正直だ。悲しいより先に、お腹が空く。つらいより先に、温かいものが沁みる。
後ろから、カンゴさんの声がした。
「ええやん。ちゃんと美味しいって分かってる」
振り向くと、カンゴさんは缶コーヒーを持って笑っていた。白衣のポケットから金平糖をひとつ出して、私の袋の横に置く。
「美味しいって思えたんは、壊れてるからやない。明日も誰かのそばにおれるように、体が守ってくれてるんよ」Xで引用
私はもうひとつ食べた。朝の風は冷たかったけれど、指先だけは少し温かかった。
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刺さった一文を、同じ夜勤明けの誰かへ。
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